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Never Let Me Go (邦訳:わたしを離さないで(カズオ・イシグロ(著)))

 ある本を本棚から見つけて去年のノーベル文学賞のことを思い出した。去年、カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞した。イシグロ氏の本は一冊しか読んだことがなかったけれども、その一冊の印象が強烈だったので氏の名前は覚えてた。その強烈な一冊というのが「Never Let Me Go(邦訳:わたしを離さないで)」だ。
 物語は主人公キャシーの一人称の形式で淡々と進められていく。物語の舞台となるヘールシャムという施設の環境とそこで過ごす登場人物に読者は違和感を覚える。物語が進むにその違和感の正体に気づき読者は登場人物とともに衝撃を受ける。しかし、物語は淡々と進んでいく。SF、サスペンス、恋愛、人生観、色々な要素がこの作品の中に散りばめられているように思う。
 個人的な感想だが、この小説が教えてくれることは簡単に言えば「人生は短い。」ということだと思う。そうならそうと小説という形式にせず「人生は短い。」と一言いってくれればいいじゃないかと思う人もいるだろう。しかし、その短い言葉では伝えることのできない感覚や感情があるからこそ、この小説は生まれたのだと思う。短い言葉ではどうしても伝えられない、だから、小説という形式をとって作者は読者に語りかけている。この作品にはそのような側面が色濃く出ているような気がする。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)